【楽天トラベル】ぐんまの源泉一軒宿絹の湯　久惠屋旅館（ひさえや）猪ノ田温泉

猪ノ田温泉
絹の湯　久惠屋旅館（ひさえや）

藤岡市といっても、下日野は四方を森におおわれた深い山の中だ。さほど標高は高くないはずなのに、県道からはずれ山道にさしかかった途端に、ひんやりと空気が変わった。木々を揺らす風の音と、渓流のせせらぐ音だけが山あいに響いている。そんな猪ノ田川のほとりに、ひっそりと一軒宿はたたずんでいる。
　　駐車場に降り立って驚いた。道をはさんだ山の斜面にびっしりと紅紫色の花が咲き乱れていた。近寄って見れば、カタクリの花だ。さらに旅館の庭のあちらこちらにもカタクリが花盛りである。
　「以前は咲いていなかったんですよ。何年か前から咲きだして、今年は特に多いですね」と、女将の深澤信子さん。夏になればホタルが飛び交うという。まだまだ手つかずの自然が、ここには残っている。
　　久惠屋旅館の創業は昭和58年。しかし猪ノ田温泉の歴史は古く、明治初期には「皮膚病に効く」という評判が高く、医者に見放された病人が東京方面からも湯に入りに来るなど、湯治場としてにぎわっていたという。宿に残る明治19年の分析表には「猪田鑛（鉱）泉ハ古来ヨリ猪田川ノ川邉（辺）ニ湧出シ薬師ノ湯ト称ス」と記されている。
　　当時は、現在の宿より100メートルほど上流へ行った源泉の湧き口に野天の湯舟があるだけだったらしい。硫化水素を含む独特の腐卵臭がすることから「卵湯」と呼ばれ、大変珍重されていたという。その後、大正の初めに旅館が建てられ、戦前までは大いに繁盛していたが、戦後になり経営が悪化して昭和45年ごろに廃業してしまった。それから長い間、惜しむ声はあっても、湯は眠ったままだった。
　「歴史と効能のある温泉を、どうしても復活させたかったんだ。金儲けのためじゃないよ、男のロマンっていうやつかな」と笑う、館主の深澤宣恵さん。周囲の反対、湯権者との交渉など、温泉復活までには10年の歳月を要したと語る。
　　復活した伝説の湯は、現在は「絹の湯」と呼ばれ、ふたたび皮膚病に効く名薬湯として、全国から湯治客が訪れている。まさに絹のようにやわらかく、滑らかな肌ざわりの湯である。

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おひとり様 6,400円～（2名1室利用時）

絹の湯　久惠屋旅館（ひさえや）

源泉名	猪ノ田温泉絹の湯
湧出量	非公開（自然湧出）
泉温	12.8度
泉質	メタホウ酸・硫化水素含有-アルカリ性冷鉱泉
効能	アトピー性皮膚炎、慢性皮膚病、湿疹、美肌効果
温泉の利用形態	加水なし、加温あり、循環ろ過