芸術品と称される、日本一のブランド牛「宮崎牛」とは?
- ゴクリとのどが鳴るほど、美しくキメの細かいサシ、ほんのり桃色がかった脂身。一般の牛肉よりも融点が低く、体温ほどの温度でも溶け出してしまう宮崎牛の脂身は、口に入れた瞬間ジュワッと溢れ、舌の上をサラリと流れる。脂のクドさはほとんど感じられず、ふだん肉の脂身が苦手な私もペロリと平らげてしまい自分でもびっくり。
「脂が甘く、芳醇な香り」と謳われる事が多い宮崎牛。
なるほど、納得。
さて、そんな魅惑の宮崎牛。どのように飼育され、私たちの食卓にあがってくるのでしょうか。
1日2回のシャンプーにウォーキング!?繁殖農家が施す、至れり尽くせりの飼育法
- まずは 「繁殖農家」の長友良昭さんの農場を訪問。
こちらでは優良な繁殖雌牛の育成と、その雌牛から産まれた子牛を肥育農家に受け渡すまでの育成を手掛けています。
長友さんは県の畜産共進会で優勝経験を持つ実力派で、実に驚くべき飼育を行っていました。コンテストを控えた若い雌牛には、出産に備えた体作りのための約40分のウォーキングに加え、1日2回のシャンプー!おかげで黒光りするような艶々の毛並!これを毎日行うというのだから、産まれてくる子牛に優良な牛が多いのも納得。実際に長友さんの農場で産まれた子牛たちの約6割は、全国各地の有名ブランド牛の産地に引き取られていくのだそうです。
愛らしい顔をした子牛は母乳で健康に育てられ、生後10ヶ月ほどして各地の肥育農場へ移ります。このような環境で育った牛だからこそ、基本がしっかり出来上がり、肥育農場でも素晴らしい優良牛に育っていくのです。
全ての牛たちにもブラッシングを施し、日々の健康状態をくまなく把握するなど、長友さんの飼育法にはたくさんの愛情が込められています。
生産者の名前で肉を選ぶ人も!地元でもファンの多い肥育農家とは?
- 続いて 「肥育農家」を営む西都市の黒木輝也さんを訪問。
こちらでは、繁殖農家で育った子牛を食肉として出荷するまでの育成を手掛けています。ちなみに黒木さんも2012年の和牛のオリンピック第7区において優等賞を獲得した実力派!
農家の腕前は、長年の試行錯誤ののち掴んだ経験・情報の蓄積がものを言う、と黒木さんは語ります。飼料の工夫はもちろん、飼料を与える時間までも研究をし、牛たちがストレスの少ない生活が送れるように牛舎内の配置は牛同士の相性で決めたり。このような細やかな気配りが肉質に大きく影響してくるのだとか。
また頻繁に訪れ声をかけてくれるJAの職員や、近隣の畜産農家との密な情報交換が、日々牛たちへの想いを熱くさせ、良質な宮崎牛を生むのだそうです。
黒木さんの手でブラッシングをうける牛たちの、頭を大きく振って鼻をブルンブルンとならし気持ちよさを体いっぱいに表していた風景がとても印象的でした。
仲間の励まし、JAの協力、長年の畜産知識― 2010年の口蹄疫被害を乗り越え、和牛日本一を勝ち取る!
- 宮崎牛を語るうえでは避けられない、2010年4月に始まった口蹄疫被害。終息した2010年7月までに約30万頭の牛・豚が殺処分されました。
西都市で一番初めに感染牛を出してしまった黒木さんの農場。 「とにかく情けなくて、情けなくて…でもこれ以上感染を広げるわけにもいかず、200頭近くいた牛たちを全て殺処分しなければならなかった。」
空っぽになった牛舎をみるたび涙が止まらず、しばらくは自宅すぐ側の牛舎に足を向けられなかったそう。流行が終息しても畜産を再開する気になれなかった黒木さんですが、足しげく励ましに訪れる友人や、畜産のアドバイスを求めてくる方々に触発され、畜産を再開。
この時期、辛うじて生き残った西都市生まれの子牛の肥育を託された黒木さん。これまでの畜産の知識・経験・技術で丹念に育てた結果、2012年の和牛のオリンピック7区にて、その生き残りの牛が見事優等賞に輝きました。
消費者への最後の橋渡しだからこそ、最高のおもてなしを!
- 宮崎牛を堪能するならJAグループ(株)ミヤチク直営の「大淀河畔 みやちく」へ。宮崎牛を知り尽くすシェフが焼き上げる鉄板焼きはライブ感満載!
サラサラに溶け出した牛脂で鉄板をコーティングし、狐色に焼きあげられた宮崎牛はお客様に応じたサイズにカットされ食パンの上に。これは余分な脂を食パンが吸収し、肉の保温性を保つための工夫なのだとか。
驚いたのが宮崎牛を焼く際に使われる牛脂もコース中のメニューとして登場すること。香ばしくカリカリに焼かれ味付けされた牛脂は、白いご飯にのせて。お腹いっぱいでもついつい後を引く美味しさ♪
「牛肉の脂が苦手だけど、ここのなら食べられる!」「お肉がとけた…」というお客様の声や反応が嬉しいと語る川野シェフ。「畜産農家が丹精込めて育てた安全安心の宮崎牛を消費者へ届ける重要な役目を担っている」と話すシェフの料理は、時折来店する畜産農家の厳しい舌をも満足させているとか。
- 大淀河畔 みやちく
- 【住所】 宮崎県宮崎市松山1-1-1 宮崎観光ホテル西館2F 【TEL】 0985-62-1129
【営業時間】 ランチ 11:00~15:00(L.O.14:00) / ディナー 17:00~22:00(L.O.21:00)