赤城温泉 赤城温泉ホテル |
『成し終えて 赤城の山に 果てるとも 湧き出る湯こそ 吾命かな』
宿の玄関前に、8代目主人の東宮欽一さんが詠んだ歌碑が立っている。「おじさん、また来たよ」、私はここを訪ねるたびに、そう歌碑に向かって声をかける。何を隠そう、ここは私の祖母が生まれた家で、欽一おじは祖母の弟である。母も子どもの頃によく、祖母に連れられて湯治に通ったという。もちろん私も小さい頃から幾度となく訪ね、欽一おじに可愛がってもらった記憶がある。
この日、出迎えてくれたのは10代目若主人の東宮秀樹さんと、若女将の香織さんだった。秀樹さんと私は、はとこ同士にあたる。以前訪ねた時に、先代の文雄さんと大女将の喜久枝さんも交えて、「東屋家系図」を広げて話し込んだことがあった。
東屋とは、元禄13(1,700)年に創業した同館の前身「あづまや」のことだ。だから我が一族では、今でも赤城温泉のことを「あづまや」と呼んでいる。昭和54年に改築され、今の屋号に改名された。現在は別邸に「あづまや」の名前が残されている。
相変わらず、この日の湯も濃厚だった。茶褐色のにごり湯が惜しげもなく、かけ流されている。湯の色具合もさることながら、湯縁から洗い場の床にかけて、黄土色の析出物が体積して、さながら鍾乳洞の千枚皿のような紋様を描いている。平成10年に改装した浴室だと聞いているが、たかだか10数年で浴槽が変形してしまっている。でも、これが悠久の時を経て、こんこんと湧き続けている天然温泉の証である。
『湧き出る湯こそ 吾命かな』
代々、守り継いできた命の湯が、平成の今日もこうして「あづまや」の湯舟を満たしている。ただただ、ご先祖様に感謝するばかりである。 |
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(C)2010 Jun Kogure / Hajime Kuwabara |
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源泉名 |
赤城温泉 新島の湯 |
湧出量 |
25リットル/分(掘削自噴) |
泉温 |
43.1度 |
泉質 |
カルシウム・マグネシウム・ナトリウム―炭酸水素塩温泉 |
効能 |
神経痛、関節痛、うちみ、消化器病、冷え性、皮膚病ほか |
温泉の 利用形態 |
加水なし、加温なし、完全放流式 |
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