上牧温泉 月がほほえむ宿 大峰館 |
大峰館は利根川右岸の高台に、ぽつんと離れて建っている。まるで一軒宿のようだ。
「このあたりは昔、人が住んでいないさびしい所だったと聞いています。自噴した温泉があり、皮膚病によく効くといわれ、近在の人が湯をくみに来たといいます」と、由来を語ってくれたのは3代目主人の石坂欣也さん。
昭和30年、自噴している湯がぬるかったため、初代の祖父が手掘りで温泉を掘り当てたのが宿の始まりだった。それでも、まだ源泉の温度は低かったという。湯守の志は、先代そして3代目へと受け継がれ、平成4年にやっと高温で、湯量豊富な源泉を掘り当てた。
「ここの湯は”切り傷ややけどに効く湯だから大切にしなさい“と先代、先々代から言われつづけてきました。実際、傷口の治りが早いんですよ。私の子どもたちで、実証済みですから(笑)」
温泉成分の分析書を見ると、三大美肌成分の一つに数えられているメタけい酸の含有が多い。保湿効果に優れているため、化粧品などに使用されている成分である。近年は、アトピーにも効くと、遠方より子どもを連れてやって来る親御さんが少なくないようだ。
渡り廊下を下って、階下の浴室棟へ。ヒノキ張りの内風呂と天然石を配した露天風呂が見えた。どちらの浴槽も、さほど大きくはないが、ふんだんに湯がそそぎ込まれ、豪快にかけ流されている。源泉の湧出地と浴室の距離は、わずか10メートル。鮮度が十分に保たれる、理想的な給湯距離である。
かすかに漂う温泉臭、湯口に付着した白い析出物。何よりも湯舟の中で体を動かすたびに、ザザザーっとあふれ落ちる湯音が心地よい。いい湯に出会うと、自然と顔がほころぶものである。わけもなく、笑みがこぼれた。 |
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(C)2010 Jun Kogure / Hajime Kuwabara |
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源泉名 |
上牧温泉 大峯の湯 |
湧出量 |
280リットル/分(動力揚湯) |
泉温 |
41.0度 |
泉質 |
カルシウム・ナトリウム―硫酸塩・塩化物温泉 |
効能 |
切り傷、やけど、慢性皮膚病、打ち身、動脈硬化症ほか |
温泉の 利用形態 |
加水なし、加温あり、完全放流式 |
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