湯檜曾温泉 清風かおる湯宿 林屋旅館 |
「我我夫婦の越佐旅行に就いて概略を書いて置く。十月廿五日に朝の上越線急行で上野驛を撥した。(中略)水上驛に下車し、自動車で一里余の湯檜曽温泉に赴き、林屋に投じたのは午後一時である。」『冬柏』昭和9年11月号)
詩人の与謝野鉄幹は、妻で歌人の晶子と林屋旅館に投宿した日のことを、当時の雑誌に寄稿している。このとき、先々代主人の林音松さんが晶子に一筆したためてもらったという歌が、今でも残されている。
『毛越のさかい清水の峠より
南乃野山紅葉しにけり』
2階の廊下に、当時の宿の様子を伝えるモノクロ写真とともに、直筆の掛け軸が展示されていた。
「与謝野晶子の掛け軸は、まだ他にもあったようですが、当時の番頭が客にせがまれて、酒と交換してしまったらしいですよ(笑)」と話す、4代目主人の林伸幸さん。
私が林屋旅館を訪れるのは2回目。2年前に雑誌の取材で、大女将の茂子さんと若女将の敦子さんにお会いして話を聞いたことがある。そのとき、あまりの湯量の多さと、湧き水のように澄んだ湯の美しさに感激したものだ。
「以前はサラリーマンをしていて、全国を方々回っていたことがあるのですが、どこの温泉に行っても『やっぱり、うちの湯が一番いい』と思ってしまいます。生まれたときから入っている湯ですからね」
2本の自家源泉と1本の共有泉から給湯される総湯量は、毎分150リットル以上になる。加水も加温もせず、3本の温度の異なる源泉を混合しながら、季節や天候によって適温に調節している。
伸幸さんは、湯量を絞り込むことを「湯を逃がす」と表現をする。「今日のような暑い日は、だいぶ湯を逃がしてやらないと……」と、4代目湯守としての顔をのぞかせた。 |
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(C)2010 Jun Kogure / Hajime Kuwabara |
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源泉名 |
湯檜曾温泉 林屋の湯・音松の湯・薬師の湯(混合泉) |
湧出量 |
152リットル/分(動力揚・掘削自噴湯) |
泉温 |
41.4度・47.2度・50.4度 |
泉質 |
単純温泉・アルカリ性単純温泉 |
効能 |
神経痛、リウマチ、胃腸病、疲労回復、美肌効果ほか |
温泉の 利用形態 |
加水なし、加温なし、完全放流式 |
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