松之山温泉には、他の温泉と比較してみると、不思議な特徴があることがわかる。 ・ 何故、山の中なのにしょっぱい温泉(食塩泉)が自噴するのか? ・ 何故、近くに火山がないのに高温の温泉が出るのか? ・ 何故、地下わずか約200m(鷹の湯2号井)から泉温90℃以上の温泉が得られるのか? これらの特徴から、松之山温泉は「ジオプレッシャー型温泉」であると推測される。 | ||
◇ジオプレッシャー型温泉の特徴 ①深い海の堆積盆地で、地層中に閉じ込められた海水が起源 ②地下2キロから7キロの深さに分布 ③静水圧を大きく上回る異常高圧 ④熱水の起源は変質した化石海水であり、大量のメタンガスを伴う ⑤熱源は地殻内部の熱伝導であり、熱水の温度は50℃から150℃ | ◇ジオプレッシャー型温泉とは 海底に堆積し、海水を多く含んだ地層が、隆起運動によってお椀を逆さまにしたような地形となり、長い年月を経て、ガス、石油、水に分離する。その水が温泉の起源となる。これは、メキシコ湾岸の油田開発で認識されたもので、その熱水系の深さは、2〜7kmに位置する。水を透さない、熱を伝えにくい地層に挟まれて、ガスや、石油が貯留するシステムによく似ている。地層に挟まれているため、かなり高い圧力がかかっている。 | |
◇松之山温泉の特徴 1. ジオプレッシャー型で静水圧を大きく上回る異常高圧である 2. 温泉井戸によって、35〜95℃の泉温の違いがあるが、塩分濃度はほぼ一定。つまり、低温の地下水と混合していない。 3. 地下3000メートルから断層を通じ浅層まで上昇している 4. 起源は地層に貯留された化石海水である(およそ800〜1200万年前頃) 5. 化石燃料(石油、石炭)などと同様に温泉の資源に限りがあるので有効活用すべき | ||
最もロマンティックなのは、現在湧き出ている温泉が、約800〜1200万年前の海水だという点であろう。まさに温泉の化石である。また、他の物質と混合していない為、その泉質と効能は、信頼のおけるものといえるだろう。逆に、その特色ゆえに最も危惧する点は、温泉がいつかは枯渇するということである。それはいつか? 地質学的には近い将来らしいが、人間のスケールから言えば、遠い将来らしい。つまり、何万年先か、何十万年先か、何百万年先か。ただ、乱開発によって、それが、近い将来になる可能性は否定できない。このことをよく考えて、行政、観光業者は資源を有効活用する必要がある。 *ここに書いた内容は、平成11年5月24日松之山温泉観光協会総会において、新潟大学積雪地域災害研究センター 渡部直喜先生による講演「地質学的にみた松之山温泉」をまとめたものです。 | ||
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