提供:高知放送
高知県で古くから受け継がれてきた伝統技能。その優れた保持・継承者や県内産業の基盤を支え、その振興に貢献している熟練技能者を称えるために創設された「土佐の匠」 。
今回は、土佐古代塗を手がける匠『池田泰一』さんをご紹介します。
※2024年6月取材
※掲載している内容は取材当時のものになります
土佐古代塗・ただ一人の後継者『池田 泰一』
優雅で美しく、その気品が印象的な「土佐古代塗(とさこだいぬり)」。
その土佐古代塗を手がける匠が『池田泰一(いけだたいいち)』さんです。
池田さんに土佐古代塗の特徴を聞いてみました。
「一言でということであれば、やはり見た目もはっきりしている、分かるようにざらざらしているところですよね。」
土佐古代塗は明治初期に始まった高知県独自の伝統工芸。
風格を感じさせる佇まいで、使い込むほどにしっとり深みのある味わいに変化していくのが特徴です。
高知市長浜にある工房「美禄堂(みろくどう)」。
ここで土佐古代塗を手がける池田泰一さんは1957年、高知市に生まれました。
23歳の時に父・八郎(はちろう)さんの元で修業を始め古代塗の世界へ。
その時、池田さんの工房・美禄堂の他に古代塗を作っている工房は2軒だけ。
どちらも後継者がいなかったことから「古代塗を存続させるには自分しかいないと思った」と当時の思いを語ってくれました。
1996年に「土佐の匠」、そして2017年には日本の卓越した技能者に贈られる「現代の名工」にも選出されました。
現在、「土佐古代塗」を継承する唯一の存在でもあります。
■池田泰一さん
「非常に丈夫ですし頑丈で堅固であって、さらに指紋とかも気にする必要がないので非常に扱いやすい漆器ということになります」
土佐古代塗の工程は長く、その数は実に30数工程にも及びます。
漆を塗っては乾かしを繰り返しながら完成までに30日以上を要する気の長い作業です。
漆を塗っている刷毛は「人毛」でできているもの。
コシがあり粘り気のある人毛製の刷毛は池田さんの作業に欠かせない道具。しかし今、刷毛を作っている職人も日本ではもうわずかだと言います。また原料の1つである顔料の作り手もいなくなっていると教えてくれました。
伝承工芸の職人だけでなく、それを支える道具・原料の生産者の減少も日本の伝統工芸の存続への大きな課題です。
振りかけているのはクルミの殻の粉末。
独自のザラ地模様を作ると同時に、土佐古代塗の特徴である堅牢さを作り出しています。
この地道な作業が、漆器の中でも最強と称されるほどの強靭さを生んでいます。
一番の人気商品「箸」ができるまで
池田さんが、特に思い入れがある、という作品を見せてもらいました。
それが「箸」です。
■池田泰一さん
「価格帯的に見て5,000円以下のものが無かったということで古代塗の入門編、古代塗に親しんでもらうためにお箸というのはぴったりじゃないかと思いまして、当時の先代である父親に『お箸をやったらどうじゃろう?』という風に言ったところ『手間がかかるばぁで儲けにならんきやめちょき』と却下されたので、そしたら自分で仕入れて自分で売り先も見つけてくるき、箸は好きにやらせてくれと」
約25年前に池田さんが初めて自分で手掛けた「箸」は、今では一番の人気商品。
土佐古代塗の看板商品となりました。
深みのある容貌。丈夫かつ堅固でありながら他の漆器とは違って面倒な手入れが不要という使いやすさも「土佐古代塗」の魅力です。
■池田泰一さん
「色んな新しいものを作って後世に残していきたいな、という風に思います。」
土佐に伝わる唯一無二の匠の技を池田さんは今後も伝え続けていきます。
美禄堂
- 住所
- 高知県高知市長浜706
- 営業時間
- 9:00~18:00
- 定休日
- 不定休
- 電話番号
- 088-842-6337
- 公式サイト
- 土佐古代塗 美禄堂
※この記事は、2024年11月27日に高知放送のWEBメディア「ぐるぐるこうち」で公開された記事を転載したものです。
