
東京といえば、高層ビルやにぎやかな繁華街、ショッピングエリアなどをイメージする人も多いはず。しかし、最西端にある奥多摩エリアまで足をのばすと、秘境ともいえる大自然が広がっています。奥多摩湖や雲取山をはじめとするダイナミックな景色は圧巻で、四季折々の美しい姿を見ることが可能です。
そんな奥多摩の自然のほか、サウナなどを満喫できるスポットを、トゥクトゥクで巡るモデルコースとしてご紹介します!
旅の始まりは奥多摩の「鳩ノ巣」駅から

奥多摩とは東京都西部の山岳地域の総称。今回の旅の拠点となるJR青梅線「鳩ノ巣」駅へは、JR「新宿」駅から最短で約90分と、都心からのアクセスも便利です。
鳩ノ巣駅舎内の「沿線まるごとラボ」では、電動トゥクトゥクと電動アシスト自転車といった電動モビリティのレンタルが可能。「沿線まるごとラボ」は、地域にイノベーションを起こす新拠点として、沿線まるごと株式会社が開設しました。

電動トゥクトゥク1台(レンタル料:1時間2,000円)の乗車定員は3名で、運転するには普通自動車免許(AT限定可)が必須。最高時速は約45km、航続距離*は約40kmです。操作は車よりもスクーターに近く、二輪のようなハンドルをにぎって運転します。ただ、スクーターと違ってバックも可能です。
*航続距離…一度の充電で走れる距離のこと

電動アシスト自転車(レンタル料:12時間まで2,000円)も駅に用意されています。トゥクトゥクも自転車も、webでの事前予約が必要です。

出発する前に、一度駅前で練習を兼ねて試運転しておきましょう。慣れてきてもいきなり遠い場所ではなく、まずは近場のスポットへ向かうのがおすすめです(※トゥクトゥク・自転車ともに12~2月のレンタルは休業予定)。
沿線まるごとラボ
- 住所
- 東京都西多摩郡奥多摩町棚澤 JR鳩ノ巣駅内
- 定休日
- 不定休
- 時間
- トゥクトゥクレンタル可能時間/10:00~17:00(最終受付16:00)
- アクセス
- 【電車】JR「鳩ノ巣」駅直結
【車】首都圏中央連絡自動車道「青梅」ICから約50分 - 詳細
- 沿線まるごとホテル
トゥクトゥクに乗って秘境スポット巡りへ!

渓谷、ダム、神社、奥多摩湖に浮橋、レストランにサウナなど、奥多摩には注目スポットが満載。電動トゥクトゥクの航続距離である約40km内で十分回りきれるモデルコースを紹介します。
▼JR「鳩ノ巣」駅からトゥクトゥクで約1分
「鳩ノ巣渓谷」で川沿い散歩と吊り橋体験

まずは、「鳩ノ巣」駅からすぐの場所にある「鳩ノ巣渓谷」へ。駅から歩いて数分、トゥクトゥクに乗れば1分ほどで到着します。ここは多摩川が秩父古生層を削ることでできた渓谷で、四季折々の自然の美しさを望めるスポットです。

駐車場に着いて坂を下り、しばらく道なりに歩くと、「鳩ノ巣小橋」が見えてきました。吊り橋なので、ゆらゆら揺れる感覚も楽しめます。急流の爽快な音に耳を傾けながら、ゆったり歩いてみましょう。

橋の下の岩場は遊歩道になっているので、そこから見上げると橋と渓谷を同時に眺められます。フォトスポットとしてもおすすめです。
鳩ノ巣渓谷(鳩ノ巣小橋)
- 住所
- 東京都西多摩郡奥多摩町棚澤
- アクセス
- 【電車】JR「鳩ノ巣」駅から徒歩約3分、トゥクトゥクで約1分
【車】首都圏中央連絡自動車道「青梅」ICから約50分
▼ トゥクトゥクで約2分
珍しい魚道と圧巻の巨大建造物を気軽に見学できる「白丸調整池ダム」


鳩ノ巣渓谷から西に向かって、トゥクトゥクで2分ほど走った先にあるのが「白丸調整池ダム」。高さ30.3メートル、長さ61メートルで、ダムの上に設けられた通路を歩くこともできます。真上から見る調整池や放流の様子は壮観です。


約330メートルの長さを誇る、日本最大級の魚道(ぎょどう)も見応えがあります。魚道とは、ダムなど水流が遮断する人工構造物によって、魚の回遊を妨げることがないように設けられた道のこと。自然と人が共存できるために必要な魚の通り道です。
魚道は地下に設けられており、管理棟から向かいます。

入館してすぐに地下へ続く長いらせん階段があり、見下ろしたときの光景がとてもユニーク!ここから階段を下りていきますが、戻る際は別ルートを通ります。

らせん階段を降りると、水路を設けたトンネルがあります。この水路が魚道です。運が良ければ、アユ、ヤマメ、サクラマスなどが泳ぐ様子が見えるので、じっくり観察してみてください。
白丸調整池ダム
- 住所
- 東京都西多摩郡奥多摩町白丸1
- 営業時間
- 10:00~16:00(最終受付15:30)
- 定休日
- 魚道は奥多摩町公式サイトの年間予定表を要確認
- 料金
- 入場無料
- アクセス
- 【電車】JR「鳩ノ巣」駅から徒歩約11分、トゥクトゥクで約2分、JR「白丸」駅から徒歩約11分
【車】首都圏中央連絡自動車道「青梅」ICから約50分
▼ トゥクトゥクで約10分
青空や緑に映える樹齢約200年の「いろは楓」

次は、「白丸調整池ダム」からさらに西にある「いろは楓」へ。いろは楓とは奥多摩エリアに自生する山もみじの一種で、こちらには樹齢約200年といわれる3本のいろは楓の巨木があります。


巨木は道路脇の、ほぼ崖となっている場所から多摩川を見下ろすように生えているので、トゥクトゥクから下りて周りの自然も含めた景色を堪能してみましょう。いろは楓越しに広がる青空と緑のコントラストが見事です。
いろは楓
- 住所
- 東京都西多摩郡奥多摩町境
- アクセス
- 【電車】JR「鳩ノ巣」駅からトゥクトゥクで約11分、西東京バス「梅久保」停留所から徒歩約4分
【車】首都圏中央連絡自動車道「青梅」ICから約55分
▼ トゥクトゥクで約6分
「大麦代駐車場」には売店もあり、休憩したいときにぴったり


さらに西へ進むと、「奥多摩湖」が見えてきます。湖畔には「大麦代(おおむぎしろ)駐車場」があるので、ここで休憩をはさみましょう。トイレのほかに売店もあり、お土産やドリンク、スナック菓子、軽食などが販売されています。

取材時は手作りのアメリカンドッグに加え、「わさび豚まん」(450円)、「鹿肉ジビエまん」(400円)、「餃子ドッグ」(320円)、「みそおでん(こんにゃくの田楽)」(300円)、「わさびジェラート」(300円)といったフードが販売されていました。奥多摩の澄んだ空気の中で食べると、よりおいしく感じられますよ。
大麦代駐車場
- 住所
- 東京都西多摩郡奥多摩町境
- 営業時間
- 24時間(売店は店舗ごとに異なる。曜日や天候によって変動あり)
- 定休日
- なし(売店は不定休)
- 料金
- 無料
- アクセス
- 【電車】JR「鳩ノ巣」駅からトゥクトゥクで約17分、西東京バス「大麦代」停留所目の前
【車】首都圏中央連絡自動車道「青梅」ICから約60分
▼ トゥクトゥクで約10分
出島の高台に鎮座する神秘的なロケーションも特徴「小河内神社」

奥多摩湖に沿ってそのまま青梅街道を進むと、見えてくるのは湖に架かる赤い「峰谷(みねだに)橋」。

この橋を渡った先は本道と出島へ向かう道とに分かれており、出島の奥にあるのが「小河内(おごうち)神社」です。トゥクトゥクは手前の駐車場に停めましょう。
1938(昭和13)年のダム建設時に水没した、旧小河内村にまつられていた9つの神社と11の神様を合祀して1957(昭和32)年に創建されました。以来、首都用水の護り神として信仰され、毎年9月には例大祭が行われています。


本殿などは小山の上にあり、奥多摩湖などを見下ろせます。パワースポットとしてはもちろん、神秘的なロケーションも魅力の神社です。
小河内神社
- 住所
- 東京都西多摩郡奥多摩町河内149
- 参拝時間
- 24時間
- 料金
- 入場無料
- アクセス
- 【電車】JR「鳩ノ巣」駅からトゥクトゥクで約25分、西東京バス「小河内神社・麦山浮橋」停留所から徒歩10分
【車】首都圏中央連絡自動車道「青梅」ICから約70分
▼ 徒歩で約11分
水面の揺れを感じながら奥多摩湖を渡れる「麦山浮橋」

「峰谷橋」の先にある本道と出島へ向かう道との分岐点のそばには、奥多摩湖へ続く階段があります。ここから対岸へ渡れるように設置されているのが「麦山浮橋(むぎやまのうきはし)」です。近くには駐車場がないので、「峰谷橋」を再び渡り、橋の入口前にある「峰谷橋無料駐車場」にトゥクトゥクを停め、歩いて向かいましょう。徒歩10分程度の距離です。
奥多摩湖は、多摩川上流部を小河内ダムでせき止めて作られた人工湖。「麦山浮橋」は、ダムの建設に伴い、歩いて行けなくなった対岸への通行路として設置されました。


今はドラム缶状の樹脂と金属の素材で頑丈に作られていますが、かつては本物のドラム缶をつなげて設えられていたことから、「ドラム缶橋」と呼ばれています。浮橋なので、水面に近い目線からダイナミックな奥多摩湖を眺められるのが特徴。歩いてみるとゆるやかに揺れるので、まるでボートに乗っているかのような感覚になります。
渇水時に水位が下がった場合は通行止めとなるので、訪れる際は事前に確認しておきましょう。
麦山浮橋
- 住所
- 東京都西多摩郡奥多摩町川野
- 営業時間
- 24時間
- 料金
- 入場無料
- アクセス
- 【電車】JR「鳩ノ巣」駅からトゥクトゥクで約25分、西東京バス「小河内神社・麦山浮橋」停留所目の前
【車】首都圏中央連絡自動車道「青梅」ICから約70分
▼ トゥクトゥクで約25分
サウナや美食が待つ「Satologue」でリラックス

奥多摩観光のしめくくりにぴったりなのが、2024年に開業した「Satologue(さとローグ)」。運転や散策で疲れた体を、こちらのサウナやレストランで癒やして帰りましょう。場所は、スタート地点の「沿線まるごとラボ」からさらに東、「鳩ノ巣駅」と「古里駅」の中間付近にあります。「麦山浮橋」からはトゥクトゥクで25分ほどの距離です。
「麦山浮橋」からそのまま向かっても良いですが、「Satologue」は「沿線まるごとラボ」と同じく沿線まるごと株式会社が運営する施設なので、電動アシスト自転車であれば「Satologue」で乗り捨てすることも可能です。トゥクトゥクは乗り捨て不可のため、一度「沿線まるごとラボ」に戻ってトゥクトゥクを返却し、レンタルサイクルに乗り換えるなどして「Satologue」へ向かうのもおすすめです。


「Satologue」では現在、サウナ「風木水(FUKISUI)」とレストラン「時帰路(TOKIRO)」が利用可能。
敷地内にある「風木水(FUKISUI)」の貸切利用は、半日プラン(朝の部/9:00~12:00、午後の部/12:30~15:30)と1日満喫プラン(9:00~15:30)があり、完全予約制。料金は人数や利用プランによって異なります。


ポンチョやサウナハットの用意もあるので、水着だけ持参すればOK(※水着のレンタルもあり 1,100円/1名)。サウナでたっぷり汗をかいた後は、コテージで外気を浴びたり、露天の水風呂に浸かったり。自然の音や風景に包まれながら、心休まるひと時を過ごせます。


庭が見える大きな窓が印象的なラウンジの利用も、料金に含まれています。サウナの入浴前後にいただける2種のオリジナルドリンクのほか、コーヒーやクラフトビール(ビールは別途有料)などを飲みながら、時間いっぱいくつろぎましょう。

また、サウナ飯として「ヤマメ照り焼きバーガー」(2,200円)も注文可能です。ふっくらしたバンズに、ヤマメのフィッシュパティがサンドされています。ムチッとした食感と素材の味を生かした味わいのパティに、甘じょっぱいソースがマッチした逸品です。

レストラン「時帰路 TOKIRO」は、第一部(11:00~12:45)と第二部(13:30~15:15)の2部制で、こちらも完全予約制。フレンチ出身のシェフが作る、地元の素材を生かしたランチコース(5,500円)が味わえます。



さらに、ランチコースの前にスタッフが敷地内の自家農園やワサビ田などを紹介してくれる、フィールド散歩のサービスもありますよ。
Satologue(さとローグ)
- 住所
- 東京都西多摩郡奥多摩町棚澤1
- 営業時間
- 完全予約制(電話受付は9:00〜17:00)
- 定休日
- 火曜、水曜日(土・日・祝日の場合は翌日)
- アクセス
- 【電車】JR「鳩ノ巣」駅からトゥクトゥクで約5分、徒歩約20分、JR「古里」駅から徒歩約15分
【車】首都圏中央連絡自動車道「青梅」ICから約45分 - 公式サイト
- Satologue(さとローグ)

東京の秘境・奥多摩の散策は、空気の澄んだ朝からスタートするのがおすすめです。現地には古民家を改築した宿や宿坊など風情豊かな宿泊施設も多いので、宿泊して翌朝出発という観光プランもいいでしょう。
都心からアクセスがしやすく、季節ごとの大自然を思う存分満喫できる奥多摩観光へ、ぜひ出かけてみてください。
取材・文/中山 秀明 撮影/浦田 進