「千本鳥居」といえば京都の伏見稲荷大社が有名ですが、青森県にもあるのをご存知でしょうか? つがる市にある髙山稲荷神社の千本鳥居は、うねうねと蛇行して連なっているのが特徴です。高台から見えるその姿はまるで龍のよう! 海外からの旅行客も注目するほど、いま人気のスポットになっています。青森在住ライターが髙山稲荷神社の魅力に迫りつつ、つがる市の歴史やグルメを堪能できるスポットを合わせてご紹介します。
髙山稲荷神社までのアクセス
まずは、髙山稲荷神社までの道のりをご紹介。首都圏から向かう場合は、東京駅から東北新幹線に乗車し、新青森駅に向かいます(約3時間)。そこからJR奥羽本線に乗り換え、川部駅へ(約30分)。続いてJR五能線に乗り換え(約25分)、五所川原駅から弘南バスに乗車し、髙山神社入口で下車します。さらに、タクシーに乗り換えて約5分。大きな鳥居が見えたら、髙山稲荷神社に到着です(全体の所要時間 約5時間)。
三柱の神を祀る髙山稲荷神社
髙山稲荷神社のある津軽地区は古くから野菜や米づくりが盛んな地で、神社からは日本海が望めます。稲荷神社の「稲荷」とは稲の神様のことで、キツネはその使いとされています。この地区で今もなお稲作が盛んなのは、古くからお稲荷さまがこの地を守ってきてくれたおかげなのかもしれません。
ご祭神は「宇迦之御魂命(うかのみたまのみこと)」「佐田彦命(さたひこのみこと)」「大宮能売命(おおみやめのみこと)」。この三柱の神(みはしらのかみ)は「稲荷大神」と称えられ、五穀豊穣、海上安全、商売繁盛などを守護しています。
まずは階段を目指そう
神社に着いたら、駐車場から授与所の奥に向かって徒歩1分ほどの場所にある赤い鳥居を目指しましょう。
鳥居の先には、96段の長い階段があります。髙山稲荷神社はその名の通り、標高22メートルの高山の地に建つ神社。敷地が広く階段も多いので、スニーカーなどの歩きやすい靴で訪れると良いでしょう。ちなみに階段のすぐ横には、同じルートに続く「女坂」という坂もあります。
日本海を望む拝殿へ
階段を上り切ると、三五郎稲荷神社や大島稲荷神社、千代稲荷神社が並んでいました。敷地内には全部で11のお社があります。
さらに階段を上ると、神聖な雰囲気を醸し出す拝殿が。まずはここでお参りしましょう。奥には珍しい山王鳥居が立つ三王神社や、恋愛成就のご利益がある命婦社(みょうぶしゃ)などもありました。
拝殿の近くからは日本海が見えました。休憩を挟んでからそばにある階段を下り、いよいよ千本鳥居を目指します。
龍のように蛇行する千本鳥居
階段を下り切ると、つややかな朱色の太鼓橋と龍神池が見えてきました。
龍神宮を過ぎて大きな鳥居をくぐり、いよいよ千本鳥居の入り口に到着。近くで見る鳥居は本当に美しく、堂々としたたたずまいに圧倒されます。
千本鳥居の「千本」は「たくさん」という意味があり、鳥居の数は参拝者の寄進により年々増え続けているのだそう。中を歩いていると、鳥居の数を数えながら歩いているカップルや、隙間から見える睡蓮池を撮影している観光客の姿がありました。
鳥居は高台に上がっていくように連なります。終着点には展望所があり、記念写真を撮る人たちでにぎわっていました。うねうねと蛇行しながら続く鳥居は、本当に龍のように見えます!
冬になると、雪と鳥居のコントラストが美しい景色が見られます。
千本鳥居の近くには神明社(しんめいしゃ)があり、その横には鳥居に負けないくらいたくさんの狛狐(こまぎつね)が鎮座しています。お務めを果たし終えた祠(ほこら)や狛狐を引き取り、毎年8月10日に鎮魂祭(ちんこんのまつり)を行っているのだそう。思わず手を合わせたくなるような神聖な空気が漂います。
神礼授与所に立ち寄ってみよう
神社をひと通り歩いたら、神礼授与所(しんさつじゅよしょ)に立ち寄ってみましょう。さまざまなご利益のある神社なので、おみくじの数も豊富です。
キツネのおみくじ(500円)や、大鳥居を模した絵馬(1,200円)など、髙山稲荷神社ならではの授与品が並びます。
御朱印も人気で、千本鳥居や龍神宮など全部で9種類の絵柄がありました(300円〜)。季節限定の絵柄もあるそうなので、気になる人は神職さんに尋ねてみましょう。
髙山稲荷神社
- 住所
- 青森県つがる市牛潟町鷲野沢147-1
- 時間
- [参拝]9:00〜17:00
- アクセス
- JR「五所川原」駅より車で約30分
- 公式サイト
- 青森県 髙山稲荷神社
参拝後はおやすみ処で一服
授与所のすぐ近くには、そばやうどんなどの軽食や和菓子を味わえるおやすみ処があります。
お土産スペースも併設しており、おすすめは自分で餡を皮に挟んで食べる高山もなか(250円)。サクサクの生地と甘い餡は参拝後のひと休みにぴったりです。
髙山稲荷 おやすみ処
- 住所
- 青森県つがる市牛潟町鷲野沢147-1
- 営業時間
- 8:30〜17:00
- 定休日
- 不定休
つがる市のおすすめスポット
つがる市にはほかにも魅力的なスポットがたくさん。髙山稲荷神社を目的につがる市を訪れた際に立ち寄りたい、おすすめのスポットをご紹介します。
地産地消の古民家カフェ「ひら埜」
古民家カフェ「ひら埜(ひらや)」は、ランチタイムやカフェタイムにおすすめです。つがる市産の食材を使ったメニューを楽しむことができ、JR木造(きづくり)駅から車で8分ほどの場所にあります。
人気の「つがるのスパイスカレー」(スープ付き1,200円※ドリンクは別料金)。プレートの上で存在感を放つお肉は、約2時間かけてほろほろになるまで煮込まれた「つがる豚」。つがる産のりんごや玉ねぎが入ったルウとの相性が抜群です。
ひら埜
- 住所
- 青森県つがる市柏稲盛岡本54
- 営業時間
- 11:00〜15:00
- 定休日
- 火~木曜日
- アクセス
- JR「木造」駅から車で約8分
- 公式サイト
- ひら埜 - HIRAYA -
遮光器土偶のふるさと「亀ヶ岡石器時代遺跡」
つがる市は、国の重要文化財に指定されている遮光器土偶(しゃこうきどぐう)が出土した地であることをご存知でしょうか。まさしく、「亀ヶ岡石器時代遺跡」は遮光器土偶のふるさと。主に縄文時代晩期(約3,000~2,400年前)の土器や土偶が出土した現場を訪ねることができます。
遺跡の入り口には「縄文遺跡案内所」があり、事前予約なしで約30〜60分のガイドをお願いすることができます(団体は要事前予約)。案内所の中には「亀ヶ岡石器時代遺跡」と、同じくつがる市にある「田小屋野貝塚(たごやのかいづか)」を紹介するパネル展示や、遺跡の周辺地形を表した立体模型、さらに映像が視聴できるコーナーもあります。
亀ヶ岡石器時代遺跡(縄文遺跡案内所)
- 住所
- 青森県つがる市木造館岡上稲元
- 営業時間
- 9:00〜17:00
※縄文遺跡案内所は、ボランティアガイド活動日・活動時間(10:00〜15:00)以外は無人
※12~3月は冬季閉鎖 - 定休日
- 無休
※12~3月は案内所、ボランティアガイドともにお休み - アクセス
- JR「木造」駅から車で約20分
- 詳細
- 亀ヶ岡石器時代遺跡
遮光器土偶のレプリカに出合える「縄文住居展示資料館カルコ」
「縄文住居展示資料館カルコ」では、本物の遮光器土偶からかたどった精巧なレプリカや、市内各遺跡からの出土品を鑑賞することができます。
こちらが遮光器土偶のレプリカ。発掘時はこのままの状態で発掘されたというから驚きです! よく見ると左足が欠けています。「何らかの願いを込めて意図的に打ちくだかれたのでは?」「何かの拍子で取れてしまったのでは?」など、さまざまな説がありますが、理由は未だ謎のままのようです。
籃胎漆器(らんたいしっき)という、植物の網かごに漆を何層も塗った器も。ここまで状態が良く残っているのはたいへん貴重!低湿地の環境が残した奇跡の出土品だと言われています。
施設内にはミュージアムショップもあります。縄文土器や遮光器土偶をモチーフにしたキーホルダーや、地元デザイナーが手掛けるTシャツなどを購入可能。ここでしか買えない限定グッズもあるので、縄文好きは必見です。
つがる市縄文住居展示資料館カルコ
- 住所
- 青森県つがる市木造若緑59-1
- 営業時間
- 9:00〜16:00
- 定休日
- 月曜日(祝日の場合は開館、翌平日に休館)
- アクセス
- JR「木造」駅から徒歩約15分
- 詳細
- 縄文住居展示資料館カルコ
目からビーム⁉︎ 木造駅の「しゃこちゃん」
土偶好きにはたまらない珍スポットも! 大きな遮光器土偶がくっついた外観が特徴のJR木造駅駅舎です。
全長約17メートルの巨大なモニュメントは「しゃこちゃん」の愛称で親しまれており、列車が駅に近づくと目からカラフルなビームを放ちます。駅員さんにお願いすれば、手動でビームを発射してもらうこともできますよ。
JR木造駅
- 住所
- 青森県つがる市木造房松
甘いものなら「たいま菓子店」
木造駅を訪れたら、ついでに「たいま菓子店」にも立ち寄ってみましょう。
遮光器土偶をモチーフにしたかわいらしいカップケーキは、その名も「しゃこちゃんケーキ」。1個250円というリーズナブルな価格にもびっくり! バタークリームがたっぷり入っていて、昔懐かしい味わいです。
たいま菓子店
- 住所
- 青森県つがる市木造照日28-3
- 営業時間
- 8:00〜17:00
- 定休日
- 不定休
- アクセス
- JR「木造」駅から徒歩約10分
春にドライブするならベンセ湿原へ
春につがる市をドライブする際は、ぜひベンセ湿原へ。5月下旬には黄色いニッコウキスゲ、6月上旬には紫色のノハナショウブの大群落を目にすることができます。湿原には30分ほどで1周できる遊歩道があり、途中に展望台もあるので、上から湿原を眺めるのもおすすめです。
つがる市は、髙山稲荷神社や亀ヶ岡石器時代遺跡など歴史ロマンを感じるスポットが盛りだくさん。あえて冬に訪れて、真っ白な雪と千本鳥居のコントラストを望むのも趣があります。市内を巡る際は、五所川原駅周辺でレンタカーを借りるか、タクシーを利用すると移動がスムーズです。自然豊か&ディープスポット満載のつがる市に、ぜひ遊びにいってみてください!
取材・撮影・文/苫米地 結子