隈研吾建築が集まる山あいの町、高知・梼原トリップ

隈研吾建築が集まる山あいの町、高知・梼原トリップ

提供:ことりっぷ

 

高知県の中西部に位置する梼原(ゆすはら)は、町内の9割を森林が占める小さな町。標高が高いことから、雲の上の町とも呼ばれています。そんな深い緑に包まれるこの場所は、世界的建築家・隈研吾氏の象徴ともいえる木造建築のルーツでもあることをご存知でしょうか。きっかけは、町内に残る木造建築「ゆすはら座」の保存運動に隈氏が参加したこと。ゆすはら座の木組みの美しさに感動し、その後の建築人生を変えたといわれています。

以来、梼原と隈氏のあいだには長い交流が続き、今では5つの隈研吾建築が町内に点在。まるで町全体がミュージアムとなって迎えてくれるような梼原で、美しい建築をめぐる、小さな旅に出かけてみませんか。

 

木組みの美しさに圧倒される「雲の上のギャラリー」

木組みの美しさに圧倒される「雲の上のギャラリー」 2022年4月現在は外観のみ見学可能

まずは、梼原の森に溶け込むように建つ「雲の上のギャラリー」を見学。隈氏が梼原で最初に手がけた「雲の上のホテル」に隣接するギャラリーです。渡り廊下棟、ギャラリー棟、ブリッジ棟で構成され、ホテルに隣接するギャラリー棟と「雲の上の温泉」を結ぶように渡り廊下棟が建ちます。雲の上のホテルの建て替え工事のため、外観のみ鑑賞できますよ。周囲の自然に溶け込むように建ち、梼原の杉材を使った伝統的な木組みの美しさに圧倒されます。

 

天井に無数の木組みが飛び出る「雲の上の図書館(梼原町立図書館)」

天井に無数の木組みが飛び出る「雲の上の図書館(梼原町立図書館)」 木材はすべて梼原のものを使用

町民が憩う図書館では、天井から飛び出るいくつもの杉材で森の中を表現しています。木々の間から自然光が木漏れ日となって差しこむように設計され、やすらぎの空間を演出しています。中央には梼原の棚田をイメージした階段を設置。ここに座って本を読むのはもちろん、月に1回開催されるコンサートではステージとしても使われるそうです。

 

(左)「本との思わぬ出会いを楽しめるように」とテーマを設定(右上)「海洋堂」のジオラマ(右下)遠くからでも目を引く外観

館内にはテーマ別に48の本棚が並び、一般図書や絵本、雑誌など約6万冊を収蔵しています。「自然のすがた」や「未来のおもい」といったテーマごとに選書された4つの小部屋をはじめ、ソファが配されたラウンジなどさまざまなエリアを用意。木々に囲まれた森を思わせる空間でリラックスしながら読書が楽しめます。高知県四万十にミュージアムがある世界的なフィギュアメーカー「海洋堂」が手がけたジオラマも展示されているので探してみるのも楽しいですよ。

 

「COFFEE STAND CANS Hutte」でほっとひと息

「COFFEE STAND CANS Hutte」でほっとひと息 「オリジナルブレンド 中深煎」420円

隈建築めぐりの合間に、山小屋風の小さなドリンクスタンドへ。こちらでは奥四万十の天然湧き水で丁寧に淹れたコーヒーをテイクアウトで楽しめます。「オリジナルブレンド」はやさしい酸味を生かしたバランスのいい味わいが魅力。ほかにも、「キャラメル アーモンド オレ」や「ホットチョコレート」など、約10種類のメニューがそろいます。

 

(左上)マフィン300円~(左下)「ミルクコーヒーソフトクリーム」450円(右)メニューはテイクアウトのみ

コーヒーと一緒に味わいたいのが、体想いの素材を使う自家製マフィン。スペルト古代小麦や梼原産の山放ち有精卵、奄美大島のきび糖など、材料のひとつひとつにこだわります。常時5~6種類がそろい、春になるとイチゴやヨモギなどのフレーバーも登場。オリジナルブレンドのコーヒーを配合したソフトクリームは、ほんのり甘くなめらかな味わいで、「コーヒーが苦手な人にも楽しんでもらえるように」と作られたそうです。自然に囲まれた場所で、コーヒータイムを過ごしてくださいね。

 

「まちの駅 ゆすはら」で、梼原のおみやげ探し

「まちの駅 ゆすはら」で、梼原のおみやげ探し 町の中心部に建つ

最後に訪れたのは、壁一面が茅葺に覆われた、ユニークな建物が印象的な「まちの駅 ゆすはら」。外観の茅のファザートは、かつて峠を越えた旅人をもてなしたという梼原の伝統的な茶堂の茅葺屋根をモチーフにしたそうです。梼原の町の中心部に建ち、かつての茶堂のようにたくさんの人々を迎えてくれています。

 

壁に鏡を貼ることで、広々とした奥行きを演出

なかに入ると吹き抜けの開放的なマルシェに天井まで続く杉丸太が林立し、まるで森の中を歩いているような気分で買い物が楽しめます。柱や天井と同じく、梼原の木材で作られた棚に並ぶのは、町の工芸品や加工品、新鮮な農産物など。高知県産の生姜を使うクッキーといった、オリジナルアイテムはおみやげにぴったりです。

 

2~3階には、「雲の上のホテル」の別館「マルシェ・ユスハラ」が入ります。洋室を中心とした客室は、木の温もりを感じる空間。町の中心部に建つので、こちらに宿泊して町をめぐるのもおすすめです。

 

今回ご紹介したスポットのほかに、「梼原町総合庁舎」や福祉施設「YURURIゆすはら」も隈研吾氏が手がけた建築です。それぞれの建築で個性が異なるので、ぐるりとめぐってみるのがおすすめ。半径1.5km以内に集まるので、半日あれば充分です。澄んだ空気に満ちた梼原町で、隈研吾建築の美しさにふれるスローな旅を楽しんでくださいね。
 

 

 

文:橘春花(フォレスト)、写真:森昌史(フォレスト)

 

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