みかん×異業種 アパレル編みかん×異業種 アパレル編

わたしたち<みかんツーリズム>の大事な使命のひとつは、愛媛みかんや柑橘類の魅力を広く全国の皆さんに伝えていくため、ユニークなプロダクトを世に送り出すお手伝いをすることです。しかし、ひとくちにユニークと言っても、ジュースやデザート、調味料といった分野においては、すでに思いつくかぎりのコラボ商品が出尽くしているといっても過言ではありません。そこでわれわれはアタマをひねりにひねって考えた挙句、ひとつの結論へ達しました─そうだ、ぼくたちにはむちゃブリがある! と。みかんとは縁もゆかりもない分野にまでターゲットを広げ、ちょっとやそっとじゃ直接みかんと結びつきそうにない異業種の方たちへ、なかばむちゃブリで良いアイディアはないか、考えていただくことにしました。その第一弾はアパレルです。松山市の中心アーケード”大街道”で、オリジナルブランドの洋服をはじめ、海外ブランドのセレクトアイテムを展開している「bunny’s showroom(バニーズショールーム)」のオーナー、平岡宏幸さんと、さっそく愛媛みかんの新しい可能性について、たっぷり話をしてきました。

bunny's showroom バニーズショールーム 平岡 宏幸
bunny's showroom バニーズショールーム 平岡 宏幸

インタビュー

─ということで、アパレルと愛媛みかんを融合させた、魅力的な商品が生まれないか、平岡さんにぜひ考えていただきたいのですが。
平岡  いやあ、ほんとにむちゃブリなんですね(笑)。でも、ぼくは身近な人たちからアイデアマンとして認知されてますからね。がんばってみますよ。まず、ぼくのビジネス上の信念として<タブーの中にしか未来はない>というのがあります。みかんは当然ながら食べ物です。 タブーに挑戦するということになれば、食べられないくらい美味しくない、とか、手に取りたくないくらい形が悪い、 という方向性があるんじゃないでしょうか。
─いや、いくら未来があっても、それはタブーすぎると思います。さすがにみかんは美味しくないとダメでしょう。
平岡  そうですよね……。じゃあ、先ほどの信念をこう言い換えてみましょうか。それは<逆もまた真なり>ということです。世間とは逆を行く、 反逆する、はみだす、そういう行動の中にこそお客さまにとって、そんな「まさか?!」のなかにこそ魅力的なプロダクトが隠れている、と。
─おお、なんだか良い感じです。
平岡  近いうちに名前を<平岡真逆(まさか)>に改名しようかと考えているくらいです。
─そろそろ本題に入りましょうか。
平岡  (笑)まあ、洋服屋のぼくから言わせれば、みかんとのコラボというのはかなり高いハードルがあります。それはどんなハードルかわかりますか?
─そもそもハードルが高いのを前提にお話を聞いているのですが……いや、まったくわかりません。
平岡  一目瞭然でしょう? それはですね、みかんや柑橘類はすでに洋服を身にまとっているということですよ!
─ええっ? ひょっとしてそれは皮のことですか?
平岡 そうです、皮ですよ! 立派な革ジャンをずっと着てるんですよ、みかんは。
─たしかにそうですね(笑)。
平岡 ぼくとみかんが手を組むなら、あのがっちり全身に着込んだ革ジャンを脱いでもらいたいですよね。じゃないと、採寸も試着もしてもらえないじゃないですか?
─しかも、オレンジや黄色のかなり派手な革ジャンですね。
平岡 そうなんですよ。これじゃコーディネートもコラボもしようがありません。でも彼らにとって、このカラフルな革ジャンは大事なアイデンティティだと思うんです。そこでひとつ提案をしたいのですが、まずみかんには皮を半分くらい脱いでもらおうかな、と。
─えっ、実がむき出しになっちゃいますけど、それはダメじゃないですかね?
平岡 彼らにとって全身の革ジャンを脱がされたときはすなわち食べられるときですから、それなりの覚悟は必要でしょう。ただ、新しい魅力をアピールするなら、半分脱ぐことくらいは許容してもらいたいんですよ。
─清水の舞台から飛び降りるつもりで、ですか?
平岡 どうしても脱ぎたくないというのなら、かわりにチラ見せというのはどうでしょうか。ギザギザ模様なんかを皮に刻んで、そこから中をチラッと見せるという。
─それは新しいですね(笑)。生はともかく、冷凍みかんならおもしろいかもしれません。最近では形そのものを矯正して五角形にした「合格みかん」なんてのが受験生に大人気です。
平岡 それもまたタブーへの挑戦ですよね。みかんが丸くなくっちゃダメなんて誰が決めた? という反逆心が生んだヒット商品でしょう。さらにアイディアがあります。日本人というのはやはりきれい好きですから、カバーがかけてあるにも関わらず、さらにカバーをかけるのが大好きなんですよ。
─ああ、たしかにハードカバーの本や文庫にはもともとカバーが付いているのに、その上から書店のブックカバーを付けたりしますね。あと、スマートフォンなんかも、むき出しで使う人が海外には多いのに、たいていの日本人はカバーをわざわざ付けています。
平岡 そういうことです。だから、みかんの皮の上に、もう一枚カバーをかぶせるという発想もありかもしれません。バナナを持ち歩くためのプラスチックケースなんかはすでに売られていますが、もっとみかんをおしゃれに見せるためのケースやカバーなんかもウケるかもしれないですよ。
─なるほど。外国人の方にも受けそうです。
平岡 あと、皮にキズがあって見た目が悪くなったみかんは加工用にするしかないようですが、そのキズを活かして、周りにかっこいいペインティングをすれば、これまたアート好きの人たちが喜ぶかもしれません。もちろん食べ物をムダにしないというメッセージにもなります。
─楽しくなってきました(笑)。
平岡 あと、もしもぼくの店でみかんを売るとしたら、値段で驚かせたいんですよね。高級な品種でひとつ幾らくらいするんですか?
─そうですね。もちろん幅はありますが、紅まどんななどの超高級品なら三キロ一万円以上で売られていますね。一個800円から900円ってところでしょうか。
平岡 ぼくなら一個五万円くらいのみかんを売りたいですよ。
─いくらなんでもそれは!
平岡 いや、そこも真逆(まさか)の発想です。中途半端は嫌だ、一番高いものがほしいというお客さまは世の中に必ずいます。まさか買う人がいないだろう、という考え方はもう古いと思います。しかも専門の果物店ではなく、うちのような洋服屋に、洋服やアクセサリーと並んで、一個五万円のみかんが売られていたらどうします?
─目を疑いますよね(笑)。
平岡 そうでしょう。そこがスタート地点です。誰かにきっと話したくなるし、伝えたくなるはずです。もちろんその五万円のみかんは五万円分のバリューを持ってなくてはいけません。本物の中の本物。愛媛みかんの王様であるべきです。ひょっとしたらそういうみかんを求めて、ドバイあたりから自家用ジェットで買いに来る人も出てくると思います。
─うん、たしかにそういうみかんがあってもいいかもしれませんね。
平岡 そういうトップ・オブ・トップを作ってこそのみかん王国えひめだと言えるのではないでしょうか?
─なんだかちょっと感動してきました。
平岡 最後にひとついいですか? ぼく、昔からつぶつぶみかんジュースが大好きなんですけど、あのつぶつぶだけを食べてみたいなあという願望があるんですよ。
─ずいぶんスケールの小さな話になりましたね(笑)。でも気持ちはわかります。缶を逆さに振って、最後のひと粒まで食べたくなりますよね。
平岡 そうなんですよ。あのつぶつぶってどうやって加工してるのかわかりませんが、つぶつぶだけをパック詰めにして売ることってできないんですかね? ぼくみたいなつぶつぶ好きは好きなだけスプーンですくって食べたいと願っているはずです。
─キャビアみたいな感じで(笑)。
平岡 そうそう、<みかんのキャビア>ってネーミングで売れば、当たると思うんですけど、どうでしょう?
─最後はふつうの商品開発みたいになっちゃいましたけど、平岡さん、貴重なお時間をありがとうございました(笑)。