岡山・湯郷温泉「季譜の里」で名湯を堪能し、季節を感じる花と料理に満たされるご褒美旅

1200年以上の歴史を持つ岡山県の湯郷(ゆのごう)温泉は、美作三湯(みまさかさんとう)の一つで、古くから湯治場として知られています。そんな湯郷温泉にある「季譜(きふ)の里」は「花を楽しむ、なごみの宿」をコンセプトに、館内を彩る季節の草花と全館畳敷きの快適さ、そして旬を大事にした色鮮やかな料理で、訪れた人をもてなしてくれます。

露天風呂付きの部屋でのんびりと過ごしながら体を癒やし、お花と料理で心を満たした1泊2日の優雅な体験をご紹介します。

 

のどかな山間に佇む温泉宿

季譜の里

岡山県の北東部、美作市の静かな山間に佇む「季譜の里」へは、中国自動車道の美作ICから車で約10分。また、JR林野駅、美作IC、「湯郷温泉上」バス停から無料送迎バスが運行しています。

 

季譜の里

「季譜の里」の近くには、岡山県に伝わる巨人伝説「さんぶ太郎(京都と美作の間を3歩で往復したことからこう呼ばれる)」のからくり時計が。9:00~21:00の間、正時になると、大きなさんぶ太郎がからくり時計の屋根を持ち上げて現れ、音声と共に約4分間の寸劇が始まります。

下の小窓からは湯郷温泉を発見したと言われる円仁(えんにん)法師や、美作にゆかりのある剣豪・宮本武蔵も登場。時計の前には屋根付きのベンチもあるので、ぜひ立ち寄ってゆっくり見学してみてください。

 

畳敷きの落ち着いたロビーでチェックイン

季譜の里

エントランスを抜け、館内へ足を踏み入れると、目の前には野山の木々を使った独創的な生け花、そして畳が敷かれた和の空間が広がります。ほのかな白檀(びゃくだん)の香りが、非日常の時間へと誘います。

 

季譜の里

チェックインは、中庭が見えるロビーで。新茶をベースにスギナやドライレモン、エルダーフラワーなどをブレンドしたオリジナルドリンクと共に、料理長手作りのヨモギのカステラ、黒豆をいただきました。

 

いつでも温泉を楽しめる露天風呂付き客室

季譜の里

今回宿泊したのは、1階にある露天風呂付きの客室。数寄屋造りの12畳の和室のほか、素朴な風合いの露天風呂を配しています。心和む掛け軸や季節を感じさせる生け花が置かれ、控えめでありながらもてなしの心が宿る空間。窓の向こうには、里山の風景を切り取ったような庭園が広がり、湯郷に流れるゆるりとした時間を過ごすのに最適です。

 

季譜の里
季譜の里

さっそく、露天風呂にお湯をはり、明るいうちから湯あみ。 信楽焼(しがらきやき)の浴槽に入り、浴槽からあふれる湯を見ていると、日ごろの疲れも一緒に流れ落ち、心身ともに浄化されるよう。最高に気持ちがいい、なんてぜいたくな時間!

 

季譜の里
季譜の里

部屋にはサイズ別にさまざまな柄の浴衣が用意されていて、好きな柄を選べるのもうれしいポイント。ほかにセパレートタイプの館内着も用意されています。入浴後、浴衣に着替えたらすっかりオフモードに。畳の上に足を投げ出して、しばしのんびりしましょう。

 

遊び心あるデザインのスイートルーム「野路菊」

季譜の里
季譜の里

そのほかのお部屋もご紹介。「季譜の宿」には「温泉スイート」と呼ばれるスイートルームが4室あり、こちらはそのひとつの「野路菊(のじぎく)」。

縁側に見立てた細長いフローリングが周囲を囲む畳のリビング、花頭窓(かとうまど※上部が尖頭アーチ状の窓)を模した扉の向こうには独立した寝室があり、シモンズのセミダブルベッドが2台備わっています。扉を閉めれば完全な個室になるので、日中でもぐっすりと睡眠をとることが可能です。

 

季譜の里

「温泉スイート」には、源泉100%の湯郷温泉をいつでも楽しめるお風呂を完備。「野路菊」のお風呂には緩やかな稜線を望めるよう窓が設けられていて、開放的なバスタイムを堪能できます。大切な人とのおこもり旅行にぴったりですね。

 

館内を彩る草花や、里山を再現した自然美にほっこり

季譜の里

部屋でひと休みした後は、館内散策へ。まず向かったのは、チェックインの際に眺めていた中庭。建物の間にある空間とは思えない、里山を再現したような自然美があふれています。

 

季譜の里
季譜の里

「季譜の里」は花を楽しむ宿。館内を歩いていると、エレベーターホールやロビー、廊下など、館内の至るところで草花が目に入ります。スタッフさんに尋ねたところ、60カ所以上に飾られているとのこと。各客室の入り口にも小さな花器にさりげなく生けられていて、もてなしの心を至るところで感じます。

 

季譜の里

いちばん大きなフロント前の生け花。美作地方の野や山に自然にあるものを取り入れているそうです。自然らしさと四季を大事にした素敵な作品ばかりで、お花に詳しくなくても楽しめます。

 

世界でも珍しい温泉を大浴場でじっくり堪能

夕食まで時間があるので、今度は大浴場で湯郷の湯をゆっくり楽しむことに。湯郷温泉は860(貞観2)年、第3代天台座主・慈覚大師(じかくだいし)円仁が作州行脚で訪れた際、この地で白鷺が傷を癒やすのを見て発見したと言われ、別名「鷺(さぎ)の湯」と呼ばれています。しかし、すでに奈良時代には貢物として温泉を朝廷に献上していたとも伝えられており、もっと昔から名湯として知られていたと考えられます。

 

季譜の里

女性用大浴場「紅梅の湯」の内風呂は大きなガラス窓があり、部屋の露天風呂とはまた異なる開放感。岡山県北部で採取される御影石(みかげいし)を用い、見た目の美しさはもちろん、足元が滑らないよう配慮した造りになっています。

泉質は、世界でも珍しい窒素ガスを含んだ微弱アルカリ性ナトリウム、カルシウム塩化物泉。治癒力が高く、切り傷やすり傷は、二度ゆっくり浸かれば跡形なく消えると言われるほど。湯船に体を沈めてしばらくすると、ぷつぷつと小さな気泡が肌に付着します。この小さな気泡が体を冷やさないので、低温でも長湯ができるのが特徴です。

 

季譜の里

内風呂を堪能したら、日中は四季を感じる庭園を眺めながら楽しめる露天風呂へ。海辺のリゾートを思わせるテラスにはビーチチェアも用意されているので、ここに寝そべりながらクールダウンしましょう。

 

季譜の里

男性用大浴場「白梅の湯」にも内風呂と露天風呂があり、内風呂からは庭園が望めます。

 

季譜の里

そしてもうひとつ、女性に人気なのが美肌効果と発汗作用、血液促進などが期待できるサウナ「薬石蒸風呂(やくせきむしぶろ)」。室内の温度は45度と低温で入りやすく、蒸気もたっぷりなので息苦しさもなし。床には13種類の天然鉱石が敷き詰められていて、寝転ぶと体中のツボを優しく刺激される感じです。

さらに、天然鉱石から出る放射線があらゆる角度から体を温めてくれるので、じんわりといい汗が流れます。サウナがあまり得意でない人や体力に自信のない人でも気軽に利用できそうです。

 

季譜の里
季譜の里

そのほか、岡山産御影石を使った石風呂「つつじ」と、庭園を眺めながら入れる岩風呂「こぶし」の2つの貸切露天風呂(15:00~22:45/各45分2,750円)も。プライベートな空間でゆっくり温泉を堪能するなら、こちらを予約するのもおすすめです。

 

季譜の里
季譜の里

大浴場で温泉をたっぷり楽しんだら、お休み処「花輪舞(はなろんど)」で休憩。ここに置かれている椅子はどれも座り心地抜群! 中でも背もたれの大きな安楽椅子は、座ると包まれるような安心感があります。

一角にセットされていた「ハーブウォーター」をいただくことに。この日は、ドライレモン、ドライオレンジ、ブルーベリー、バジルにスモモなどが入った自家製。さわやかな風味でお風呂上がりにぴったりです。

 

旬の食材をふんだんに盛り込んだ「季節の花会席」

季譜の里

瀬戸内海、日本海、里山の食材を使用し、季節の彩り豊かな料理に定評がある「季譜の里」。夕食は、庭園を眺めながらいただける食事処「山ぼうし」で。

テーブルごとにすだれで仕切られた掘りごたつの座敷で、ゆっくりとくつろぎながら食事を楽しめます。さらに、日が暮れてくると庭に明かりが灯り、より美しい空間へと変わります。

 

季譜の里
季譜の里

この日は、湯郷温泉ならではの山の幸と海の幸を存分にいただける「季節の花会席~夏~」。食前酒の梅酒の後、先付の冷やし夏野菜から始まります。冬瓜(とうがん)やハス芋、ハモ、ヤングコーンに橙酢(だいだいず)を合わせた、涼味あふれる一品。

そして、鱧真丈(はもしんじょう)、白木茸、焼しめじなどの具材と出汁を入れた、吸い物代わりの土瓶蒸しが供されました。

 

季譜の里
季譜の里

続いて登場したのは、「季譜の里」の夏の風物詩である氷のドームお造りで、木槌で氷を割っていただきます。湯郷温泉は岡山や鳥取の港から車で1時間30分ほどの距離。毎朝、塩水を詰んだトラックが生きた魚を運んでくるため、お造りのスズキやタイは新鮮そのものです。

 

季譜の里

続いて、これもまた夏らしい焼八寸。アユの塩焼きに、オクラの胡麻和え、焼き茄子の薬味味噌掛け、ほうずき山桃、ヤマメの甘露煮、ミズダコの糀醤油和えと、山海の旬が皿に並びます。

 

季譜の里

「季譜の里」は、ドリンクはオールインクルーシブ。アルコール類はビール、日本酒、ハイボール、焼酎、ワイン、薬酒など種類が豊富。さらに、ノンアルコールも多彩にそろえており、なかでも八海山の甘酒にキンモクセイの花の香りをまとわせた「白酒(しろざけ)」、ローズヒップとハイビスカス、ハーブを合わせた「色花ワイン」や「蜜豆ハイボール」など、オリジナルドリンクがおすすめです。

 

季譜の里
季譜の里

焼き物はアワビの蒸し焼き。蒸し焼きして柔らかくなったアワビは旨味が凝縮し、もっちりとした食感。さらに、和牛の石焼ステーキと豪華なメニューが続きます。ステーキは糀醤油、柚子胡椒、岩塩が添えられていて、一枚ずつ味を変えて楽しめます。

 

季譜の里
季譜の里

米茄子、海老の冷やし鉢に続いて締めのご飯物は、新生姜じゃこご飯。一緒に赤出汁が提供されました。

 

季譜の里

最後のデザートは、自家製リンゴのアイスクリームとスイカ、ところてん。

旬が盛り込まれた繊細な味わいだけでなく、遊び心のある演出も加わり、とても楽しい夕食でした。今回は夏でしたが、別の季節ならどんな会席料理を味わえるのだろうと想像が膨らみ、リピーターが多いというのも納得です。

 

朝食は体が喜ぶ薬膳肉味噌定食

季譜の里

翌朝は快晴! 屋上の庭園にもひまわりなどの花が咲き、にぎやかです。山の風景を眺めながら、朝の空気を吸って気持ちよく体が目覚めたら、お腹を満たしに朝食へ向かいます。

 

季譜の里

朝食メニューは「定番和朝食」「薬膳肉味噌朝食」「洋朝食」の3種類から選べます。選んだのは、人気の「薬膳肉味噌朝食」。主役は牛肉を使った肉味噌で、生姜や唐辛子、山椒、陳皮、けしの実、松の実など11種類の生薬が一緒に練り込まれています。

まずは、肉味噌をご飯のおかずに一杯、次に生卵をご飯にかけて肉味噌と一緒に一杯、最後は、肉味噌をのせたご飯にほうじ茶をかけて一杯と、3通りの味わいを楽しめます。朝からしっかりご飯をたくさん食べたい人におすすめです。そのほか、小鉢六種の盛り合わせ、黒豆納豆、ざる豆腐、味噌汁、蒜山のヨーグルトとオレンジなど。

 

季譜の里
季譜の里

「定番和朝食」は「薬膳肉味噌朝食」とほぼ同じメニューですが、薬膳肉味噌がサバの糀醤油焼きに、生卵が出汁巻き玉子に変わります。「洋朝食」は焼きたてパンに、卵料理や蒜山(ひるぜん)酪農ウインナーのほか、スープ、野菜サラダ、蒜山のヨーグルト、オレンジなどが付きます。

 

周辺スポットを散歩してからチェックアウト

季譜の里

朝食がおいしくて食べ過ぎてしまったので、腹ごなしの散歩へ。

宿から歩いて6分ほどの場所にあるのが、無料の足湯「ふれあいの湯」。「さんぶ太郎」の足形をモチーフにしたユニークな形をしていて、お湯の温度は38度。散歩途中の足休めにぴったりです(営業時間/10:00~19:00※11~2月は~18:00)。

 

季譜の里
季譜の里

「ふれあいの湯」近くには、湯の神様を祀る塩湯社(しおゆしゃ)、さらに、1200年前に湯郷温泉を発見した円仁法師の像も。

 

季譜の里
季譜の里

宿に戻り、11時のチェックアウトまでお土産探し。館内のお土産処「花篭(はなかご)」には、地域特産品や「季譜の里」オリジナル商品など、厳選された商品が並びます。お菓子をはじめ、こだわりのドレッシングやお漬物、湯郷の温泉ミストや石けんもありました。お酒や備前焼の器などもいいですね。

 

世界に3つしかない窒素ガスを含んだ貴重な温泉を楽しみ、館内にあふれる季節の花で癒やされる。全館畳敷きなので部屋を出るときも、お風呂上がりもそのまま素足でいられるのが気持ちいい。そして、もちろん料理は質・量ともに大満足!

温かみのある雰囲気とおもてなしに心地よさを感じ、また来たくなる、そんな宿でした。自分へのご褒美として、また、大切な人と一緒に、気の合う友人同士で、「花を楽しむ、なごみの宿」へ出かけてみませんか。

 

美作三湯 湯郷温泉 季譜の里

住所
岡山県美作市湯郷180
アクセス
【車】JR「林野」駅より約7分、中国自動車道「美作」ICより約10分
【バス】JR「林野」駅、「美作」IC、「湯郷温泉上」バス停から無料送迎バスあり
チェックイン
15:00
チェックアウト
11:00
客室数
32室
駐車場
30台(無料)

撮影/岡村智明 取材・文/惣元美由紀


※この記事は楽天トラベルガイドによって取材・作成されたものです。

2023/9/1
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